< 好きなところ >

 恋人の間でよくある定番の質問。それに自分が答える日がくるとは思っていなかった……わけじゃねえぞ、断じて。ナンパも滅多に成功しない、ほとんどがフラれるばかりであろうとも、努力はいつか報われると、いつか俺にも可愛い彼女ができると信じていたわけで、つまり何が言いたいかというと、そういう質問をされれば俺は自信満々で答えられるということだ。目の前の少女に対しては特に。

 どこ? と彼女が問うので、そうだな、と一つずつ答えていった。

 鈴の鳴るような声が好きだと思う。
 ちっこくて、少し力を入れれば折れてしまいそうな細さも好きだ。
 さらさらとした黒髪も、大きな黒目がちの目も、雪のように白い肌もぜんぶ。

「……そういうこと、さらっと言って恥ずかしくないの?」

 ああ、忘れてた。

「そうやってすぐに赤くなるところも好きだぜ」

 満面の笑みを向けると、質問に答えてないと怒られた。