< 浮気はダメだと思うわ、ロニ >

 それがロニの性分だと言えばそれまでなんだろう。

「今日もお美しいですね」

 けれど。

「まあ。ふふ、ありがとうございます。でも、あまりからかわないでくださいね。わたくしも結構な年を重ねていますもの。勘違いしてしまったら、ロニさんも困るでしょう?」
「いやいや、本心ですって。それに美しさには年なんて関係ありません。俺はただ事実を事実のままに言っているだけですよ」

 ……。

「ロニさんは人を持ち上げるのがお上手ですね」
「いえ、だからですね」
「でも、わたくしだけに構っていると、本当に大切な方に誤解されてしまいますわ。お気をつけくださいね」
「へ?」
「わたくし、リアラさんに嫌われてしまうのは悲しいですから」

 ……見てるの、バレてたみたい。

「げっ、リ、リアラ、いつからそこに……!」

 ロニが慌てふためいている。その慌てようが少しおかしくて、笑いをこらえながら背を向けた。
 リアラ!? と叫びながらロニの声が近づいてきたので、

「ロニなんてしらない」

 背を向けたまま告げて、そのまま走り出した。ロニがますます焦ったように追いかけてくる。その間に聞こえるフィリアさんの笑い声。彼女は何もかもお見通しのようだ。大人な彼女が羨ましい。ロニが言い寄ろうとするのもわかってしまう。けれど、わかったところで納得がいくものでもない。
 だから逃げる。ロニが捕まえてくれるまで。

(捕まえられたら、いっぱい謝ってもらおう)

 そうしたら許してあげる。