< 演奏者と鑑賞者 >

 弦を弾いていると、音に引かれるように生き物たちがやってくる。その数は日によってまちまちだ。何匹も訪れたり、一匹だったり。その中で、いつものように姿を見せる小動物が一人。

「いらっしゃい、フィリア」
「こんにちは、ジョニーさん」

 小動物とは、我ながらいかがな表現だろうか。しかしそう思えてしまうのだ、ジョニーにとってのフィリアとは。
 ちいさくて、やわらかくて、

(抱きしめれば壊れそうだ)

 お気に入りの相手なので、そんな真似はしたくないのだが。

「お前さんも罪な女だねえ」
「……え?」

 そのうち理性なんて放り投げてしまいそうなので、ジョニーはいろんな意味で困っていた。