< 決して口にしないこと >

 嘘をつき続けようとした。自分にはそれができると思っていたから。
 嘘をつき続けようとした。ただ傷つきたくなかったから。
 どの道を選んでも、結局は傷ついたのだけれど。

(それでも俺は)

 本当の気持ちなんて絶対に言わないだろう。
 だって知っている、彼女には心に決めた相手がいるから。
 たとえそれが、もういない人間だとしても。

「お前さんに謝られるのだけは苦手なんだよ、……フィリア」

 自分の前にいる時は、できるだけ笑顔でいてほしい。
 彼女の悲しみは、本当の意味で慰められやしないのだから。