< 「どこのどいつに惚れられたんだ」 >
くしゅんと、近くにいたフィリアがくしゃみをしたので、大丈夫かと呼びかけてみる。
「大丈夫ですわ。心配してくださってありがとうございます、リオンさん」
「……別に」
笑顔を向けられ気まずさからそっぽを向くと同時に背中を叩かれた。不機嫌な面持ちで背後を見やると、ルーティの姿がそこにある。何をする、と、それはそれは嫌そうに言ってやった。
「べーつーにー? あんたもフィリアにだけは優しいわよねえと思ってー」
「……貴様、喧嘩を売っているのか」
「誰が。あたしはただありのままを言ってるだけよ」
「……」
お互いが譲らない火花を散らし合う。すると今度は第三者の声が入ってきた。
「知ってる、フィリア?」
「あら、スタンさん」
「一回くしゃみをするのは誰かに褒められてる時、二回は悪口、三回は惚れられた時、四回以上が風邪をひいた時らしいよ」
「そうなのですか?」
「うん、そう」
フィリアは何回くしゃみした、と尋ねるスタンにルーティが割り込む。ちょっとスタンなに勝手に二人でなごやかな会話なんかやらかしてんのよ。えーいいじゃないかルーティはリオンと仲よくしてるんだし。仲よくとかやめてよねこんな奴とぞっとしないわ云々、スタンとルーティは口論(なのかはよくわからない)を始めてしまった。
「あ、あの、お二人とも……」
「放っておけ、どうせ好きでやってるんだ。それより」
「はい」
「……三回、だったな」
「え?」
何がでしょうと聞き返してこられ、リオンはうっと詰まる。そしてまだ二人が言い合っていることを確認した後で小さく、くしゃみの数だと答えを返した。
一番言いたいことを結局言えなかった坊ちゃん
世間ではそれをヘタr(終了)