< どこかへ >

 手を引かれて歩き続けていた。止まる気配は一向に見られない。耐え切れずフィリアは言葉を発した。

「リオンさん、どこまで行くのでしょうか」
「……」
「……リオンさん?」

 返らない答えに首をかしげる。その間もずっとリオンは歩き続けていたので、フィリアも足を進めざるを得ない。リオンさん、と、もう一度呼びかけると、ようやく答えが返ってきた。

「どこまで行こうか」
「え?」
「お前はどこまで行きたい?」

 逆に問い返され言葉に詰まる。まだ足は止まらない。

「どうか、なさったのですか。リオンさん」
「……別に。ただ」
「ただ?」
「どこかへ行ければいいと思っただけだ」
「? リオンさんは、どこへ行きたいのですか」

 ぴたりと急に足が止まったせいで、フィリアはリオンの背にぶつかってしまった。すみませんと謝ろうとしたが、それはリオンの腕の中に消えてしまう。

 とおくへいきたい、おまえとふたりで。

 耳元に、そう落とされたような気がした。