< 同性の特権 >
日も落ちてきたということで、スタンたちは近くの村の宿屋に泊まることになった。夕食をすませた後で各々が自由に過ごす中、ルーティはフィリアへと近づく。
「フィーリア」
「はい。なんでしょう、ルーティさん」
ソファに座って読書をしていたフィリアが振り向いた。ルーティは背もたれに両腕を置き、身を乗り出すようにフィリアへと顔を寄せる。
「今夜は冷え込むらしいって。後で暖炉の薪、何本か持ってくるって宿屋の人が言ってたわ」
「まあ、そうなのですか。では、今夜は暖かくして眠らないといけませんわね」
「そうなのよ。だからさ、今日は一緒のベッドで寝ない?」
「え?」
ルーティが提案したと同時に、彼女の背後でがたがたと騒々しい音が響いた。告げられた言葉よりも、フィリアはそちらの音に驚く。目を見開かせていると、ルーティから気にしないでいいと言われた。首をかしげつつ、フィリアは気に止めないことにしておく。
「いいでしょ? 女の子同士なんだし」
「わたくしは構いませんけれど……。ルーティさんはそれでよろしいのですか?」
「当たり前でしょ。嫌だったら最初から言ってないわよ。フィリアってあったかそうだから、今夜は寝るの楽しみだわー」
ふふふんと笑いながら、ルーティはフィリアに「気にしないでいい」と言った背後へと目をやる。悔しそうだったりうっすらと顔を赤くさせてたり考えの読めない表情だったりを眺めながら、彼女は勝ち誇ったような笑みを「彼ら」に向けた。