< 見間違い未遂 >
眼鏡をかけないと、フィリアは何も見えない。視界は靄がかかったようにぼんやりとしており、人を間違えることも何度かあった。
(あら、向こうにいるのは……)
レンズの手入れのために眼鏡を外していたフィリアは、ふと顔を上げた先に見知った人物を見つけた。声をかけようという思いが強かったためか、視界をはっきりさせる前に声を出してしまう。
「スタンさ」
「フィリア」
しかし呼びかけは中断された。肩を引かれ振り向くと、目の前に青が散る。
「あっちはジョニーさんだよ」
「え……」
「俺は、こっち」
ね、とスタンが笑った。ぼやけているはずの世界でその笑顔がはっきりと見えたのは、それだけスタンが近くにいるということだ。まだ混乱しているフィリアがそれに気づくのは、もう少し経ってからだった。
見間違えた相手の選択理由は、金髪であることと同じくらいの身長だからということで
呼ぶ前に阻止するスタンの必死さに笑っていただければ