< 無自覚あるいは天然の >

「スタンさんの手は大きいですね」

 自分の手のひらを見ていたかと思うと、そう告げたフィリアに「そうかな」と問い返す。

「はい。男の方だからかも知れませんが、わたくしのものと比べると違いがよくわかりますわ」
「へ?」

 言うが早いか、フィリアが右手を伸ばした。何気なく上げていた左手に、その白い指が合わさっていく。

「フィ、リア」

 手袋越しとはいえ、いつもと違うぬくもりが手のひらに伝わってきた。突然の行動に動揺した声が出たが、フィリアはそれに気づいていないようだ。

「ね。スタンさんのほうが大きいでしょう」

 にっこりとフィリアが笑顔を見せる。まったくの無自覚に、スタンは恐ろしさすら感じてしまった。

(まいったな……)

 はてさてこれから、この手のひらをどうしたものか。

握っても怒られないかな