< 仲のいい彼と彼女 >

「おっかしいわね~」

 所用をすませて宛がわれた部屋に戻ると、そこへいたはずのフィリアがいなくなっている。どこかに行くと聞いていなかったルーティは不思議に思い、宿屋内を探し回っていた。その途中、広間で一人寛ぐリオンを見つける。ちょうどいいと、ルーティはリオンに声をかけた。

「ねえリオン、フィリア見かけてない?」
「知らん」
「……あんたねえ。即答する前に、ちょっとくらい考えたらどうなのよ」
「考える必要などないだろう」
「あるわよ! 考える時間が、見かけたかも知れない可能性を作り出すのよ、ああもう、これだからよく考えない子供は……」
「おい」

 リオンの声が低くなり、少年が苛立っているのがわかった。これ以上は自分自身にも危ないと(主に電撃などで)、ルーティは捜索に戻ることにする。

「まったく、どこ行っちゃったのかしら。黙って姿を消すような子じゃないのに」
「……おい」
「何よ、あんたにはもう頼ったりしないから安心して」
「いつからだ」
「え?」
「いつからいない」

 質問に首をかしげた。もしかしなくとも、フィリアを探すのに協力してくれるのだろうか。

「そ、そうね、十分くらいかしら。あたしが部屋を出たのがそれくらいだから……」

 答えると同時にリオンがため息をついた。いったいなんだというのだ。ルーティはリオンを凝視する。返ってきたのは諦めを促す視線、そして、決定的な言葉だった。

「スタンも十分前から姿を消している」

 ルーティは言いようのない思いを抱え、リオンを見つめ返す。リオンもまた、ルーティと同じような表情をしていた。それからルーティは小さく息をつく。仕方ないわね、とこぼして。

「フィリアと二人で買い物に行こうと思ってたけど、馬に蹴られたくないからそれはまた今度にするわ。代わりにあんたが来なさいよ、リオン」
「……なぜ僕が行かなければならない」
「荷物持ちがいるからよ。いちいち当たり前のこと聞かないでよね。ほら、早く行くわよ」
「うわ、マントを掴むなっ、この、馬鹿力が!」