< ほんとは嫌いだった >
愕然とするフィリアを見ながら、スタンはどこかすっきりとした気分になった。当たり前かも知れない、ずっと言えなかったことをやっとのことで吐き出せたのだから。
「俺の言うこと、信じられない?」
追い打ちをかけるように言葉を重ねる。フィリアは見開かせたままの目をこちらに向けた。それは自分を信じているとも、信じられないとも取れるようなものだ。どちらも取れるようで、反してどちらとも取れない。読みにくいものだなと思う。
「……でも、あなたはあの方のことを」
「うん。あんな結末を迎えて平静じゃいられなかったのは事実だ。リオンにあの道しか選ばせなかったヒューゴは許せないと思う。許せないと思った」
「それでは、どうしてですか」
どうしてスタンさんはリオンさんのことを嫌いなどと言うのですか。続くであろう言葉をスタンは遮る。君がいるからと、さもフィリアが悪いように言ってみせた。
フィリアは言葉を失ったようだ。当然だ。
「わたくし、が……?」
震える声。泣いてしまいそうな表情は、けれどまだ泣き出しはしない。
「そう、君のせいだよ。君があいつと心を通わせたりなんかするから……、俺はリオンが嫌いになった」
「……そんな」
「フィリアが悪いんだ」
スタンは自嘲気味に笑った。自分の勝手な言いぐさに悲しむフィリアを、それでもどこかで喜んでいる自分に愕然として、これほどまでに狂っている自分がおかしくて惨めでしかなくて。
(傷つけたくなんてなかったのに)
それでもフィリアを責める言葉は、止まってはくれなかった。