< 認め合う人が増えました >

 この日もまた、ユージーンとフィリアを見つめるリオンとスタンの姿があった(怪しいことこの上ない)。そんな彼らに、ひとり音もなく近づく。
 最初に気づいたのは、スタンだった。

「わっ、びっくりした。ヴェイグじゃないか、どうしたんだ?」
「……いや」
「いつにも増してむっつりだな。なんだ、今度は違う意味の『むっつり』とでも言われたのか」

 リオンはヴェイグに目を当てることもせず、言葉だけを投げつける。内容が内容だけに眉をひそめたヴェイグだったが、ユージーンたちの観察に熱心な割には他のことをよく見ている物言いに溜飲を下げた。
 しかし、そこまで「ヴェイグ=むっつり」という図式が定着されているのかと思うと、やはりヴェイグにとっては面白くない。確かに口数が少なく、そこまで愛想があるわけではないことを自覚はしているが。
 そんなヴェイグに、スタンが声をかけた。

「リオンのことは気にしなくていいよ。今ちょっと気が立ってるだけで、普段は……まあ普段から、こんないけ好かない奴だけど」
「おい、スタン」
「慣れればどうってことないし、からかえるネタさえ見つければ面白い奴だってわかるし」
「……」
「怒ったらこんなふうに剣を突きつけられることもあるけど、まあこれもご愛敬ってことで」
「スタン、それ以上いうと本気で大変なことになる」

 理解はできたからもういいと、ヴェイグはスタンとリオンの間に入る。舌打ちしながら剣を収めるリオンを見つめ、けらけらと笑っているスタンを眺め、苦労しているのはきっとリオンのほうなのだろうとヴェイグは感じた。
 ところで、と今度はリオンが話題の転換を試みた。リオンもリオンで、この気まずい空気をなんとかしたいと思ったのだろう。

「何か用があって、わざわざここに来たんだろう。なんだ」
「あ、ああ。……それは」
「言いにくいことなら、無理して言わなくても大丈夫だよ」
「いや、その」

 いざ言葉にしようとすると、なかなか音にならない。しかし、この二人になら言える気がして、ヴェイグはようよう口を開いた。

「…………俺も、みつあみなんだ」

 その場に沈黙が落ちる。
 危惧していた静の訪れに、ヴェイグは気後れした。やはり言うんじゃなかっただろうか。けれど言わずにはいられなかったのも、ヴェイグの真実ではあった。

「えーっと、続けてもらえるかな?」

 静かだった空間に、スタンの声が落ちる。落ち込みかけたヴェイグは我に返り、自分の言葉を聞いてくれるのだろうかと気分を浮上させる。スタンに続くように、リオンもまた声を発した。

「お前もみつあみだが、それがどうしたんだ」
「ああ、俺も髪を結うのに気を遣っているんだ。戦闘の際にほつれたり、ほどけたりして邪魔になれば命の危険にも繋がるからな。最近では、ほどけにくく、かつ癖がつかない結い方を考案している」
「へえ、それはすごいや」
「そうだ、だからこそっ」

 あの二人の会話に加わりたい!
 ヴェイグにしては珍しく、声を大にして言った。

「……その声はヴェイグか?」
「あら、スタンさんにリオンさんも。お揃いでご歓談中ですか?」

 その声は、ひっそりと観察されていた二人を気づかせてしまう。そんなつもりは微塵もなかったヴェイグは驚き、スタンとリオンも目を見開かせた。
 対するユージーンは彼らの様子から何某かを察そうとしているのか、「ふむ」と手を顎に当てている。フィリアはなんの疑問を抱くこともなく、ただ三人の仲がよさそうなことに喜んでいた。
 それがしばらく続いた後、ユージーンが口を開く。

「ヴェイグたちも一緒に、髪の結い方について話し合わないか?」
「え?」
「あら、それはいいですわね。ヴェイグさんのみつあみも綺麗だと、いつも思ってましたもの」
「……!」
「髪の結い方と言われても、僕には関係が……」
「いや、別に髪の話だけでなくともいい。みなで何かを歓談する時間を持つというのも、悪くないだろう」

 どうだろう、とユージーンが問いかけた。
 それこそ望んでいたヴェイグは「悪くない」とすぐに反応し、スタンも「喜んで」と答える。最後まで返答に詰まっていたリオンも、やがて「少しだけなら」と呟いた。

マイソロ2ではヴェイグも「お下げ仲間」として会話してたので今回も入ってればよかったのにという願望
今更ながらキャラ崩壊すいません