< 見つめられていたので >

 もじもじとしながら俺を見ている少女がすぐそばにいる。ただ見つめるだけで、何を言うでもなく恥じらう様子は、少女の可憐さと相まって「愛らしい」以外の何物でもないのだが。

「……どうかしたか、リアラ」
「え!?」

 声をかけると、予想以上に驚かれた。というより、驚かれるとは思わなかった。物陰からこっそり見るわけでもなく横で堂々と見ていたのだから、不思議に思われるのは当たり前ではないのだろーか。

「え、えっと……ええと、その」
「うん?」

 とりあえず手を止めてリアラに向き直る。何を隠そう、今日の俺は料理当番なのだ。鍋の中では、俺特製スープが出来上がりつつある。いつもながらいい匂いだ。と思っていると、リアラも同じことを言った。

「いい匂い、よね」
「おお、まあな。なんだ、匂いにつられてきたのか? カイルでもないのに、珍しいな」
「そ、そうじゃないわよっ」
「? じゃあなんだ?」

 首をかしげながら尋ねると、またもリアラはもじもじとし始めた。それほど言いにくいことなのか。怪訝に思いながら、今度は俺がリアラをじっと見つめてみた。

「……ロニって意外と料理が上手だから、教えてもらえればと思って……」

 どれほど経ってからか、リアラがぽつりと呟いた。「意外と」という引っかかる言葉はあったが、恥ずかしそうに告げる様子がどうにも俺のツボを突いてくる。この姿を前にして、誰が否と言えようか。

「いいぜ。俺が手取り足取り、教えてやる」
「その言い方いやらしいわ、ロニ」
「……リアラ?」

 教えるのやめるぞと低く言うと、謝りながらもリアラが笑った。恥じらいもいいけど、やっぱり俺は屈託ない笑顔のほうが好きかも知んないな。リアラの言葉にほんの少し傷心しつつも、頭の隅ではそんなことを思っていた。