< 暗がりの中で >

 誰にも見られたくなくて、誰にも気づかれないように静かに移動した。人けのない暗がりを見つけて腰を下ろす。立てた膝を抱えるようにして、頭を伏せようとした。
 声をかけられたのはちょうどその時だ。注意深く行動したはずなのにと、驚きがフィリアを襲う。

 震える声で、どうしてここへ、とフィリアが問いかける。
 フィリアこそどうしてここに、と逆に問い返された。

 何も言えずに口を噤む。相手はフィリアを問い詰めようとはせず、ただそこに佇んでいるだけだった。
 しばらくの間、沈黙が続く。どれほどか経った後で、その場にぽつりと音が生まれた。

 頼むから、一人で泣かないでくれ。

 彼がフィリアにそう告げる。頼りなく揺れたそれは、切なさを帯びていた。

「彼」が誰かは(多分)お好きに当てはめられるんじゃないかと