「この白い花、教会で見かけたことがあるよ」

 花器からのぞく花を見ながらそう言ったフレンに、フィリアは頬を緩ませた。

「マドンナリリーは聖母の象徴ですから、教会花としてよく用いられているんですよ」
「そうなんだ。でも、聖母というのもわかる気がするよ。汚れがなくて清らかな感じがする。君みたいだ」

 微笑み返されて、フィリアは思わずうつむいてしまう。フレンの友人にからかわれることが多々あるせいで多少の耐性はついた(と自分では思っている)が、こうした揶揄のないまっすぐな言葉はすぐに対処できない。顔が熱くなるのを感じながら、フィリアは小さな声でなんとか謝辞を述べた。

「騎士道精神に則るなら散らすことなんてご法度だけど、『騎士』としては多少の興味もあるな」
「え?」
「なんてね」

 顔を上げたフィリアに、冗談だよとフレンは言う。白い花びらをなぞっていたのだろう彼の指が、ひどく印象に残った。

百合は純潔のシンボル=(フィリアの)純潔を散らしてみたい、みたいな
※もともと好き勝手やらかしてた騎士に対して「騎士道」は生まれたらしいです(ウ○キ知識)