珍しい砂糖菓子を見つけたので、思わず買ってしまったのが昨日の話。
そして、それを差し出したのが今日、今時点の話。
「砂糖菓子、ですか?」
「そう。甘い物好きなフィリア嬢なら、喜んでくれるかと思ってね」
にっこりと笑んでみれせば、予想通りに目の前の女性は微笑み返してくれる。もとより、たとえ好みに反したところで彼女は笑ってくれるのだろうけれど。気を遣わせるよりは、心から喜んでほしいと思う。
「珍しい形の砂糖菓子ですわね。これは、何をかたどっているのでしょうか」
問われ、答える。無駄に世間を渡り歩いていた自分を、褒め称えたいとすら思った瞬間の出会いを思い出すかのように。
「これは、ルピナスっていう花をかたどったものだよ」
藤を逆にしたような、三角形を形づくった花。吸肥力の非常に強い特徴を「狼」に例えた、解釈のことば。
「花言葉を知ってるかい?」
「え? いえ、花の名前自体、初めて聞きましたわ」
柳眉を下げて、すみません、と謝る彼女に、ふっとこぼれたのは微笑だろうか、苦笑だろうか。そっと、砂糖菓子を一つつまんで口に放る。砂糖を主として作られたそれは、甘い以外の何物も感想を抱かせはしないものだけれど。
(一番あまいものが何かって聞かれたら、それは)
ベタと言われようと、やはり彼女のくちびるなのだろうと、
「……『貪欲』らしいよ」
口づけてささやけば、予想通り、彼女の頬は真っ赤に熟れた。
特定の彼女にだけは欲張ってしまうジョニーさんもいいと思う