東国では不吉の象徴として知られる花。実際に有毒植物であり、口にすると死んでしまうと言われるもの。死人花や地獄花、幽霊花など、縁起の悪い異名も多い。
 しかし、そればかりでもないのが、人の面白いところなのだろうか。

(印象や解釈から複数の意味があるが、そこに一貫性はない)

 花言葉など、所詮は人間が勝手に作った戯れの一つに過ぎないのだろう。本気で「それ」に縋ることなど、馬鹿らしい。

「不吉と言われる植物ですが、咲き誇る姿はとても綺麗だと思います」
「美醜はともかく、咲く時期や花の性質だけで不吉だなんだと言うほうがおかしいのだろう」
「それは……否定はできないかも知れませんが、そこに何かを見出してしまうのが人なのかも知れませんわ」

 馬鹿らしいと思いながらも惹かれるのは、自分自身も愚かだからなのだろうかと、リオンは苦く笑った。

「リオンさん?」

 苦笑したリオンに、フィリアが首をかしげる。いいや、と首を横に振って、リオンは赤い花に目を向けた。

「彼岸花は、花と葉が同時に出ることはないそうだな」
「はい。この花の特徴でもありますね」
「これに似た特徴の花を『相思華』と呼ぶが、これも同じように呼ばれるらしい」

 葉は花を思い花は葉を思う、という意味を持たせたものだとリオンは続ける。そこから花言葉の一つが生まれた、とも。

「僕がお前に言葉をおくるとしたら」

きっとその言葉なのだろう。視線をフィリアに戻したリオンは、もう一度苦い笑いをこぼした。

彼岸花:想うはあなた一人