「これ」
「はい?」
「やる」
「え? あ、ありがとうございます……」

 ルークから渡されたのは、小さな鉢植えだった。葉っぱが左右非対称であり、よく見ると花びらはハートの形に似ている。赤や白やピンクと、とりどりの色が鉢からこぼれそうだ。

「このお花、どうされたんですか?」
「ジェイドの奴がどっかから調達してきたらしくてさ。あーっと、確か、ベゴニアっつったっけ」

 失礼な話だが、ルークが告げた人物とこの可愛らしい花が結びつかない。首をかしげながら話を聞いていると、ルークからフィリアに渡すといい、というようなことを告げられたそうだ。

「花言葉がどうとか……ちゃんと聞いてねえけど、なんかそんなこと言っててさ。あいつから指図されんのは気にくわないけど、お前はこういうの好きそうかもって……」

 言葉尻が小さくなっていくが、ルークが何を言ったのかは聞こえた。フィリアは顔を綻ばせて、改めて礼を言う。

「ジェイドさんは、花言葉とおっしゃっていたんですね? では、これから資料室に行って一緒に調べてみましょうか」
「ああ、そうだな。……あいつのことだから、なんか罠でもありそうだけどな」

 そんなことを言うものではない、という言葉は、フィリアの口からはすぐに出てきてくれなかった。

ベゴニア:片思い
花言葉を知って慌てふためくルークを酒の肴にする気しかない大佐