「花の種類とかよくわかんねえんだけど」

 頬を掻きながら差し出されたそれを受け取る。

「カラーですわね。ふふ、綺麗です」
「うん。まっしろくて綺麗だから、あんたみたいだなって思った」
「……リッドさん」

 頬に熱が集まるのを感じて、フィリアはそっとうつむいた。嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが混ざって、どんな表情をすればいいのかわからない。そうしていると、第三者の声がフィリアの耳を打った。

「お前にしては趣味がいい選択だな」
「うわ。急に出てくるなよ、キール」
「仕方ないだろう、通り道にいたんだから。それに僕も、その花はフィリアに似合うと思うぞ」

 花の形が修道女の襟を連想させるところから「カラー」とつけられた説もあるらしい。その知識からキールは、フィリアに合うという感想を持ったようだ。それは聖職者である自身を示すようで、嬉しいとフィリアは思った。
 素直に謝辞を述べれば、難しい顔をしたリッドと目が合う。どうしましたと問えば、その表情のままリッドがキールに言った。

「そんなつまんねえ理由で選ぶなよ。こういうのは見た目とか、そういうのだろ」
「つまらないとはなんだ。由来から選ぶほうが説得力はあるだろう。……! そうか、つまりお前は、イメージカラーだけにカラーを選んだと言いたいんだな!」

 したり顔でキールが言う。室内のはずなのに、寒々しい風が三人の間を通っていった。

「とんだ災難だったぜ」
「そ、そんなことをおっしゃってはいけませんわ」
「そうは言うけど、引きつってるぜ。あんたの顔」

 反論できずにうつむけば、リッドがふっと笑ったのが空気の振動で伝わる。顔を上げることができずにそのままでいると、声が降ってきた。

「でも、やっぱり花よりあんたのほうがいいな。俺は」
「え?」
「同じまっしろでも、フィリアはそうやって赤くなるだろ。そういうこと、可愛くて好きだ」

 まっすぐな言葉と、向けられるリッドの笑顔に、フィリアは何も言えなくなってしまった。

リッドはきっと大事なところで直情的だと思う