「そーだなあ。リンドウとかブーゲンビリアとかもいいけど、やっぱり俺はイカリソウかなあ」
「イカリソウ、ですか?」
「うん、イカリソウ」
頷きながら互いの指を絡ませると、フィリアは戸惑いながらも頬を染めた。絡めたまま顔を近づければ、色はいっそう濃くなる。増していく赤に、スタンはそろりと微笑んだ。
「君を離さない、っていう意味があるんだって」
告げながら指に力をこめれば、フィリアは顔をうつむけてしまう。羞恥心でいっぱいなんだろうなあとスタンは思うが、それでも手を離すことはしなかった。
「ねえ、ぴったりだと思わない?」
「え、と、その、ど、どうで、しょうか……」
真っ赤な顔でとつとつと返すさまは彼女らしく、それは同時にスタンの嗜虐心を煽る。もう少しいじめてみようかという考えも起きたが、それはそれで歯止めがきかなくなりそうな気がしてやめることにした。
絡めていた指をゆっくりと解けば、それと同時にうつむいていた顔が上げられる。ごめんね、とスタンは謝った。
「フィリアが嫌がるなら、もうしないよ」
「い、いいえ! 嫌ではないですっ」
フィリアにしては珍しく強い主張に、スタンは目をまたたかせる。ある程度の反応は予想していたが、ここまで勢いがあるとは思わなかった。
驚くスタンに、フィリアも我に返ったのか、はっとして口元を隠す。再び赤くなっていく彼女の顔に、スタンは頬が緩むのを止められなかった。
(……精力剤にもなるんだけど、それは言わないでおこう)
スタンは くうきを よんだ !