「フィリアさん、フィリアさん!」
「あら、カイルさん。もしかして狼の仮装でしょうか。ふふ。お耳と尻尾が可愛らしいですわ」
「へへ、ありがとう。それでね、イタズラもするけど、お菓子もちょうだい!」
「はい、お菓子ですね。ご用意していますわ」

 こちらですと取り出そうとしたところで、告げられた内容に引っかかった。

「……あのカイルさん、今なんと」
「イタズラもするけどお菓子もちょうだい!」

 先ほど耳に入れた言葉は聞き間違いではなかったようだ。菓子を取り出そうとした手は固まり、フィリアはそれ以上動けなくなった。

「あれ、フィリアさん?」

 どういった対応がいいのか考えあぐねるフィリアに、首をかしげていたカイルのほうが動き出す。

「じゃあ、お菓子は後でいいからイタズラするね!」
「え!? いえ、お待ちくださ」
「阿呆か、お前は!!」

 あわやというところでジューダスが駆けつけ、フィリアはいたずらを決行されずにすんだのだった。

 その一部始終を見ていたハロルドはのちに語る。

「ジューダスが救世主ってところが、なんとも皮肉よねえ」
「いや、そこは傍観してないで止めるところじゃねえ?」

 面白そうなものを見物しないで何をしろと言うのかと返され、ロニは肩を落とすしかなかったとか。

ジューダス=ユダ(裏切り者)が救世主 的な皮肉